2008.11.16 PM01:40異物


「イカの哲学」集英社新書 著者: 中沢新一波多野一郎 を読んだ

共著というよりは波多野一郎さんが1965年に発表された「烏賊の哲学」に中沢新一さんが新たなる解釈を加え、今の時代に失いつつある生物としての人のあり方を問うた本です

大きなテーマとしては戦争を回避できない人のメカニズムを(私には)ちょっと難しい言葉で解説してらっしゃる
個人的には戦争や紛争という人と人が殺し合うような出来事を身近なモノとして受け止められない世代ではあるが
そんなことは身近に起こらなくとも、何があっても回避すべきことだというのは、物心付いた人なら普通に導き出せる結論なのある

なのに、戦争は未だになくならない、この大いなる矛盾はどころからくるのだろう!?的な疑問はこの本を読んでくださいませ
私にはそれよりも「異物」というワードがとても気になった

生物は基本的に固有種を死守するために異物の混入を検知して排除するシステムをDNAの中に持っていて
そのシステムが唯一生殖という瞬間にだけ停止する
もっと判りやすく書けば、卵子は精子を受け容れて新しい命が誕生する瞬間である

人は知能が異常に発達したが故に地球上の生態系を破壊し、さらには自然までも回復が困難なまでに自らの暴利を貪った
ヒューマニズムという「人間中心主義」が正しいものとして傾倒して歯止めが掛からなくなった
波多野一郎さんは、神風特攻隊員~シベリア抑留~アメリカ留学という経歴の持ち主で、
アメリカ留学時代の生活のためにしたアルバイトとして、イカの水揚げ作業を手伝った
沢山のイカが水揚げされる中、中にベルトコンベアーから零れ落ちるイカを見た時に
神風特攻隊員の一人だった自分とそのイカとの類似性に気が付いた
それを「烏賊の哲学」として出版されたのである

イカだって、現に命があって海を回遊していたのである、それが今は人に食されることを運命と諦めてベルトコンベアーに乗せられている
神風特攻隊員だった(過去の)自分も、敵艦に爆弾もろとも突撃して命を落とす覚悟をしていた
イカの知能が覚悟という意志を持てるかどうかは定かではないが、擬人化して考えれば有り得ることなのかも知れない
イカも自分も「実存」しているひとつの命であることには変わりないという悟りのようなものか

イカは人にとってみれば明らかに「異物」である、でもそのイカの実存を人は感じることができる(可能性がある)
この異物と判断することと類似性を想像する力をどちらも人は持っている
中沢新一さんはその「実存」(戦時の敵に命があること)をより意識することでしか本当の平和(人と人が殺しあわない状態)は訪れないと書かれている

人間中心主義という思考は時として「自分中心主義」へと変化していることに気づかない
場合があるということなのである
人の都合の良いように...が自分の都合の良うに...と変化した瞬間を人は感じ取ることが出来ない
それは何も戦争だけではなくて、日常の生活の中にでも溢れていることなのである

それは「異物」の排除というDNAのメカニズムそのものであり、「異物」を受け容れることができるはずの人はその大切な機能を顧みなければならない

図らずも難しい話になってしまったのだが
本当は「異物」の代表として私は注射器をイメージしていた
それは中一になる娘が大の注射嫌いで、注射と言われただけで泣くわ叫ぶはの大騒動なのである
ほんの一瞬チクッとする程度の注射でどうしてそこまで...と疑問に思っていた
その理由が異物の強制的且つ意識的な混入に対する拒絶反応だったのだとやっと理解したのである
異物を受け容れられるのは理性である、異物を拒絶するのは動物としての感性なのだろう
そういう意味では我が娘は私に似ず感性に満ち溢れた子なのかも知れない

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1964年、岐阜県生まれ こんな人あんな人の虜です
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